最後の恋
今の私にはまだ、心から祝福してあげることもできない。


だけど、目の前には幸せそうに頬を緩める彼女の姿があった。


きっとはたから見た私たちは、対照的な二人に見えているだろう。


そして、次の言葉に私はさすがに違和感を覚えた。


「ふふ、ありがとう。それでね、今月中には海外に赴任する彼と一緒についていく事が決まって。」


今月中に海外赴任…?


彼の秘書である私が知らされていないなんてそんなはずはない。


…何かが…おかしいと思った。


もしかしたら…私は何かとても重大な間違いを犯しているのだろうか。


「…杏奈、どうしたの?具合でも悪い?」


正面にいる紫乃が身を乗り出し、心配そうに覗き込んだ。
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