溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「で? 浅田さん、桐島となんかあった?」
あまりに唐突でストレートはその質問に、飲んでいたカフェオレを吹き出しそうになった。
「大丈夫? 背中なでてやりたいけど、勝手に触ると桐島に殺されそうだからさ。ごめんね。しかし、浅田さんわかりやすいな。その反応は、やっぱりなにかあったよね?」
ゲホゲホとむせながら、笑顔を浮かべたままの顔を見上げる。そうだった、この人は人畜無害そうに見えて、なかなか油断できない人だった。
「だって桐島、ここのところすげぇ機嫌悪いんだもん。かと思えば落ち込んでみたり……。あいつの百面相とか、恐ろしいのなんのって。ここのところ忙しくて浅田さんに会えないからかなと思ったら違うっぽいしさ」
顔を引きつらせる私を見て、ニヤニヤ笑う彼はなんだか面白がっているように見える。
「半澤主任、面白がってません?」
「だって、あの桐島が振り回されてんだもん。面白くて仕方ない。ま、でも俺は『御曹司と平凡女子の恋を応援する会』の会長だからな。相談に乗ってやってもいいぞ?」
なんか、上から目線だな。だけど、この人もモテる。桐島主任ほどではないにしろ、整った顔をしているし、愛想もいいからモテ具合でいえば彼より上かもしれない。