溺愛御曹司は仮りそめ婚約者

事態を飲み込めずにいる私とは対照的に、隣でその事実を聞いたじいちゃんの反応は、至って冷静なものだった。

「しゃーんめぇ、それも運命だ」

と、泣きそうになるのを必死にこらえている私に茨城弁丸出しで笑って、形のいいつるっぱげの頭を撫でる。

育ての親の余命半年という事実を受け止めきれない私に、じいちゃんはカラカラとなんでもないことのように笑った。

「沙奈、かんかだから泣くな。しゃーんめぇよ。俺も歳だ。いつまでも生きてはいられねぇべ」

茨城弁で屈託なく、いい子だから泣くな、しょうがないだろうとじいちゃんが言う。

「じいちゃん。それはそうかもしれないけど……いきなりすぎて頭がついていかないよ」

病院を出て、じいちゃんと七歳から就職するまで暮らしていた茨城の田舎の道を車で走りながら、ポロポロとこぼれる涙をハンカチで拭う。

「まあ、でもあれだな。唯一の心残りは……沙奈の花嫁姿とひ孫の顔を見れなかったことだな」

「じいちゃん……」

じいちゃんの言葉に、胸がズキズキと痛む。私は恋人を作る気も、結婚をする気もない。だから、その願いを叶えることはできない。

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