溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
執事の花嫁教育レッスン【3時間目】
「お嬢様、おかえりなさいませ」

瀬名の運転する車で送られて家に戻ってくると、
橘はありすの帰りを家の前で待っていた。

「じゃあな。ありすちゃん。
今度また話を聞かせてくれ」

さりげなくありすの頭を撫でると、
瀬名はそのまま帰っていく。
その後ろ姿に胡乱気な視線を送ると、
ありすの方を向き直った。

「お嬢様、お疲れさまでした。
今日はいかがでしたか?」

尋ねてくる橘の顔を見ながら、
ありすは先ほどの車の中での会話を思い出し、
仄かに頬に熱を感じている。

「…………あの。ちょっと疲れちゃったので、
先にお風呂に入ってきます。
後でまた部屋にお茶を届けてもらえませんか?」
そう声を掛けると、
橘はありすの上着を受け取りながら頷く。

「かしこまりました。
それでは後程、お部屋の方にお茶を届けます」

ありすはその言葉を背中で聞きながら、
家に入るとそのまま、浴室に向かった。


(結局……俊輔さんにはいろいろ聞かれちゃったな)

はっきりとすべてを答えたわけではないけれど、
多分カンのよい彼のことだ、
色々と気づかれてしまった気がする。
浴槽で体を伸ばしながら、
ありすはひとり
先ほどの帰りの車の中でのことを思い出していた。


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