胸いっぱいGYU
そしてあの悪夢のような日々を過ごした部屋の前に立つ・・。

持っていた合鍵を鍵穴に差し込んだ。

恐る恐るドアを開けてみる。


「・・・香奈・・？」

ドアを開けたオレは声のトーンを落として、いるかいないかわからない香奈に呼びかけてみた。

ざっと部屋を見渡してみる。

・・・やっぱり人の気配はなさそうだ。

だけど・・なんだろ・・。

最近まで・・人が住んでいた痕跡があった。


・・人が住んでいたっていうか・・香奈だろうけど・・。

ただ、その香奈の行方がまったくわからない・・。


好き好んで一緒にいたわけじゃないけど、それでも数年間一緒に暮らした相手の行きそうな場所が全く想像できないオレは少し自己嫌悪に陥ってしまった。


とりあえず心を落ち着かせるために部屋のど真ん中に設置しているソファに腰掛けた。

それに続いて前のテーブルに肘をついて頭を抱え込んだ。


「・・・どうなってんだ・・」

今の気持ちを思わず声に出してしまった。

まったく落ち着かない心の内がどうにかなってしまいそうだった。





そのとき・・。


玄関の向こうのドア付近で何やら物音がした。

　

オレは条件反射のようにドアにむかって神経を集中させる。




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