泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。



 たぶん、こういうのを巡り合わせとか
いうんだと思う。



大きな窓の一つを微かに開けて、そこからあづが
不安そうに顔を出していた。




 まぁあの大声を聞いて、起きない方が
無理な話だよな。



「あづ……悪い、起こしたよな」




 潤が空に舞っていた煙草の煙を片手で
払って、あづの前にしゃがみ込んだ。



「いや、別にいいけど……。
どうかしたのか?」




「何でもねぇよ」




 俺は咄嗟に、あづの言葉を食い気味に否定した。




「けど、潤泣いて……」



「う、嬉しかったんだよ。
久しぶりに、
お前が本気で笑ってる所が見れて」



 潤が言った言葉は、少なくとも嘘ではなかった。



しかし、それで泣いた訳では無い。




 泣いた本当の理由を知っているのは、
ここでは俺と潤自身だけだ。




 ——それでいい。




 あづに泣いた理由がバレたりしたら、ダメなんだ。


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