もう一度、あなたに恋していいですか
午後6時45分。
俺は彼女のマンションの最寄駅に到着した。

うわ、大雨だな。

会社を出た頃から降りはじめてはいたが、ここまで強くなるなんて。
今日は傘もない。
だからさっき彼女にむかえにきてほしいとメッセージを送った。
駅から近いし、すぐに来てくれるだろう。


「圭介さん…っ」

それから5分ほど経ったあと、傘をさした彼女が現れる。

「ごめん、むかえに来させて。料理中だったよね」

「ううん大丈夫。あとは焼くだけだから。傘持ってきたよ」

そう言って彼女は濡れていない方の傘を差し出す。

「一本で良かったのに」

「そういうと思ってたけど、一応」

用意周到な彼女に俺は髪をくしゃっと撫でて笑った。

「帰ろうか」

「うん」

彼女が濡れた傘を開こうとしたとき、後ろから見知らぬ男の声が彼女を呼んだ。

「あれー…松岡さん?」

振り返ると見たこともないスーツの男。
彼女と同い年くらいか?
同じ会社の奴でもなさそうだ。

「奇遇ですね。…彼氏さんのお迎えですか?」

その男は俺の方を睨んでくる。
背筋がぞくっとする。
なんなんだこいつは。

「…まあ、そんなところです」

「仲良いんですね~羨ましい。こんな可愛い彼女をゲットできた彼氏さんが羨ましいですよ」

笑顔で嫌みっぽく投げかけてくる言葉は、敵意をむき出しだった。

もしかして彼女のことを好きなのか?
…妬けるな。
負けるわけにはいかない。

「…でしょう。可愛いくて仕方ないですよ」

「ちょっと…圭介さん!」

彼女は首をふっているが、俺は何か言い返さないと気がすまない。
俺は笑って彼女の頭を撫でる。

「だからちょっかいかけないでくださいね。彼女は僕のなので。一本余ってるので良かったら傘どうぞ。いこっか未羽」

「え…っ」

俺は強引に余った傘を押し付け、彼女の腕を引きその男のもとから離れる。

あんなやつに彼女は渡さない。
絶対に。
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