もう一度、あなたに恋していいですか
「昨日、行けなくてごめんな」
俺は昼休憩に彼女を連れて、近くの洋食屋に入る。
ほぼ満席だが、まわりに同じ会社の社員らしき人は見当たらない。
「ううん、仕方ないよ。何か急用があったんでしょ?」
「ああ。子供が熱だしちゃって、病院連れていってた」
そう言うと一瞬彼女の顔が曇った気がした。
「それなら仕方ないよ。大丈夫だった?」
「ああ、お陰で。いまは落ち着いているよ」
「…そう、良かった」
彼女はそう言って笑う。
しかしやはり元気がない気がする。
「この店最近見つけたんだけど、意外と知られていないみたいで会社の人もほとんど見かけたことないんだ。だからずっと連れてきたいと思ってた」
昨日はすでにハンバーグを作ってくれていたかもしれない。
こんなことで昨日の罪滅ぼしにならないかもしれないが、彼女がいつものように笑ってくれたら。
「ありがとう」
しばらくすると彼女の目の前にオムライスが運ばれてくる。
「美味しそう」
彼女は目を輝かしながらそう言う。
やっぱり可愛いな。
「本当に美味しいものに目がないな。そういうところ可愛い」
「なっ…」
彼女は俺の言葉に頬を染める。
すぐに赤くなるところ、初々しくてたまらない。
「冷めないうちに食べようか。いただきます」
「いただきます」
俺は食事中あまり話さず、ご飯を味わう。
彼女もそれをわかっているので話しかけてこない。
その代わりちらちら俺の方を見てくる。
本当は気づいているけれど、あえて気づかないふりをする。
「そういえば、この店はハンバーグが人気らしいよ」
俺は食べ終わると彼女にそう投げかける。
「そうなんですね。なのにハンバーグにしなかったんですね」
予想通りの言葉だった。
「そうだね。だって今日の夜ご飯はハンバーグだから…ね?」
”今日は君のハンバーグが食べたい”
その合図だった。