もう一度、あなたに恋していいですか
「私と親密になったふりをするのよ」

少しだけ距離をつめてスキンシップをとって、私と前よりも距離が縮まったふりをする。
そうしたら美々は昴を気にするようになるかもしれない。

「試してみない?」

昴は少し黙って考え込んだあと、こくりと首を縦にふった。

「寧々、協力してくれるか?」

「もちろんよ」

その作戦は次の日からすぐに開始した。

まずは登校。
昴がいつものように寝癖をつけて家を出てくる。

「おはよーっす」

昴はあくびをしながら私たちのところへ歩いてくる。

「ちょっと昴、また寝癖ついたままよ」

私はつかさず突っ込みをいれる。

「寝坊して整える時間なかった」

昴はふたたびあくびをして目をこする。

「前から気になってたのよね。寝癖なおし買ってきたから整えてあげるわ」

私は朝、昴と合流したら必ず寝癖なおしを取り出し寝癖を整えることにした。

「ほら、美々じっと見てるわよ」

私は小さな声で昴に話しかける。
美々は私たちの様子をじっとうかがっている。

「これ本当に効果あるのかよ」

「やってみなきゃわからないでしょう」

私たちはひそひそと話しながら、寝癖を整えてから通学路を歩く。
この日から美々はそんな私たちの後ろを歩いて登校するようになっていった。
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