秋恋祭り （あきこいまつり）

　祭りの準備には、婦人部の人達が昼食を作ってくれる。

　
「美夜ちゃん、一緒に食べよう」


　雅巳の声に気持ちが高鳴る。何故なら、雅巳が誘ってくれるのはいつも私だけだから。


「うん」


　だけど、雅巳は来ない。
　途中で呼び止められた綺麗な女の人と楽しそうにしゃべっていたから……

　私は、なんだか苛々して仕方なかった。

　たかが、祭りの昼食だ……　

　分かっている……

　でも、雅巳の顔を見たとたん私の口から出てしまった言葉は……


「嘘つき！」だった……


　何故か泣きそうになるのを必死で堪えていた。

　大した事じゃあないのに、こんな態度を取ってしまったら、雅巳はどう思うだろう？　
　子供みたいで面倒臭いって思われたら…

　言ってしまった事を後悔して、恐る恐る雅巳を見た。

　しかし、何故か雅巳の顔は凄く寂しそうに見えた。


　そして、雅巳は私の方へ目を向けた。


「嘘つきじゃない！」


「……」

　突然の雅巳のはっきりとした口調と深い目に見つめられ、私は言葉が出ない。


「明日、美夜ちゃんの会社に行くから……　絶対……」


「本当？」


「俺は、嘘つきじゃないから……」


　私は別にデートに誘われた訳じゃないのに、気持ちが浮だってしまった。

　多分、雅巳と約束を交わせた事に、私は何か特別な物を感じたからだ……