秋恋祭り (あきこいまつり)
 小さなインテリア関係の職場で働く私は、一応『受付』と言う名札を付けてはいるが、実際は事務雑用が殆どだ。

 昼休みから戻り、午後の郵便物に手を伸ばした。
 その時、事務所の入り口から二人の男性が入って来るのが目に入った。

 私は椅子から立ち上がり受付用の顔に変え、挨拶の準備に姿勢を整えた。


 一人は時々来る建築事務所の人だとすぐに分かったが、後ろから入る男性には心当りが無かった。

 背が高く、がっちりとした体形にスーツが良く似合っていて、はっきりとした目が深く、一目でカッコいいと思った。
 

 私は男の人が苦手だ。
 気軽に話をされてもからかわれているようで、反応に困ってしまうのだ……

  
 彼氏が出来ないのも、自分が一歩踏み込めないせいだと分かっている。

 それに、きっと私は可愛くないし、美人でも無いからもてないんだと半分僻んでいた。




 「いらっしゃいませ」

  笑顔で挨拶し、ロビーへとご案内した。


 だから、今入ってきたカッコいい男性にも、受付用スマイルしか出来なかった。


 しかし、いつもの事にそれほど気を止める事も無く、その男性の事はすっかり忘れてしまった。
< 2 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop