日常に、ほんの少しの恋を添えて
「嘘じゃないの! 私見たんだからっ!! 間違いなく志緒、あんた秘書課に配属になってたのよ!」

 まーさかー、そんなぁー
 きっと史華が慌てて見間違いでもしたんだろう。
 呑気にそんなことを考えながら貼り出された辞令を見に行き、私は腰を抜かした。

 『長谷川志緒 秘書課勤務を命ずる』

 ほ ん と だ

「え……ええええっ!? なんで!?」

 そう、史華の見間違いなどではなく、間違いなく私は秘書課に配属になっていたのだ。
 どっ、どういうことどういうこと??
 慌てて総務に戻り、私たちの研修担当である人事部の責任者にそれとなく尋ねてみる。

「あの、私希望していないのに秘書課に配属になっているんですが、これってどういう……」

「あ、長谷川さん? ……ちょっと待ってね……うん、間違いなく秘書課に配属になってるね。え? なんでかって? そりゃー上が決めたことだからね。ちょっと俺にはなんとも……」

 人事課の先輩社員も、なんでだろう、と首を傾げている。

「そ、そんな……!」
「でも辞令は絶対だから。長谷川さん秘書課で頑張って!」
「……は、い……ありがとうございます……」

 お礼の言葉が、最後の方は消え入りそうな小さな声になってしまった。

 間違いじゃ、ない!!

 そして悲しいかな、私の戸惑いなど関知せずといったところで、人事は遂行された。

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