好きになった彼は幽霊でした。

そんな日々の中でも、あの笑顔を忘れる事はずっと出来なくて。


中3の夏、また親の都合で元に戻る事になった。もしかしたら君に会えるかもと期待していた。


転校した学校でお昼に屋上に行くと、偶然ベンチで空を見る君を見つけた。


成長して容姿は変わっていたけど、横顔は確かに君だった。


「……っ!」


声をかけようと思ったけど出来なかった。
久しぶりに見た君は綺麗になっていたから。


綺麗過ぎて、適当に生きてきた俺なんかが近づけるはずもなかった。


俺はきまってお昼に屋上に行き、遠くから君を眺めて、結局声をかけられないまま中学を卒業し、高校入学した。


そして事故にあった日、気が付いたらここにいた。


何故ここに居るのか分からなくて、とりあえず家に帰ろうと思った。けれど、そこから出ることは出来なかった。


それから俺はこの場所に囚われ続けた。
ずっと外に出たかった。君に会いに行きたかった。


しばらくして、あの世への案内人に未練を解消するまで成仏出来ないと言われ、メモを渡された。


そこには、金環日食を見る事と好きな子へ思いを伝える事と書かれていた。


けれど、図書室から動けない俺は来るか分からない時をただ待つ事しか出来なかった。

< 98 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop