時を超えて君想ふ
土方side


『人が死ぬかもしれないじゃん』

『死ななくても怪我したり、痛い思いを
したりするわけじゃん』

『それが目に見えてわかるのに、
どうして笑えるの?』

『行く側も見送る側もそれが分かってて』

『どーして…』


軽口を叩いていたときとは打って変わって
何かを我慢したような声だった

そういってチカは黙ってしまった

はあ、溜息を吐き、書き物の
手を止め、オレの背後にいるチカの方を
向く

チカはオレの万年床に仰向けになっていた
目は虚で何も写してないよーに見えた

たまにあるチカがチカでないようなその姿


チカがここにきてからしばらく経ったが
チカへの印象は初めと変わってねェ

何かを抱え込んでいるようにしか見えねェ

まア、チカは女にしては強いと思う
武術や体力的な意味では

だが、たまにみせる表情
ふと覗く手足の細さ

そして、日中の元気な姿が一転し、
夜中は静かで、たまに寝ているときに
魘されている

芯が強そうに見えて、押すと壊れそうな
ちぐはぐな印象


つまりだ、そんなチカをほーっておけねェ
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