時を超えて君想ふ
「死ぬのは怖ェ

さっきまで一緒に馬鹿やって、笑っていた
奴が死んじまうかもしれねェ

今日を生き延びても明日はどーかわかんねェ

だがな、自分が死んでしまったとしても
仲間が死んでしまったとしても

“誠”

コレがありゃいい

俺たちはコレのために、
護りてェモンのために
刃を持ってるんだ

だから怖くねェ
怖くても、怖くねェンだよ」

『…なにそれ…』

「チカには難いかもなァ」

『ワタシは!!

ワタシは…人が死ぬのを見たくないの…
怖くて怖くて堪らない

失いたくない
人が死ぬのを見たくない

なのに、どーして
死ぬかもしれないのに、笑顔で行ったの?
笑顔で送り出さないといけないの?

やだよ…』


そういうチカは泣きそうな悲痛な顔で
一人称が変わったことすら
気づいていなかった


「ふーん、おめェにとってここが大事な
ところってことか」

『え?』

「そーだろーが、ここが大事だから
ここの人間の心配してるんだろ?」

『…そーかも』

「かも、じゃなくて、そーなんだよ
全く世話が焼ける」

やれやれ、書き物再開しよーかと思った

『ねー、土方、抱っこしてよ』

「あ、勝手にしろ。ん?ア?」

今、抱っこっつった?
抱っこってあの抱っこ?

『許可得たりー!』

そういったチカはいつもと同じ調子、のようにみえた

胡座をかいていた土方の上に
自分から横向きで座るチカ

すっぽり収まり、チカは土方の心臓があるところに自身の耳を押しつける

そして、とくんとくん、と規則正しい音に
目を閉じていた

まるで警戒していた猫が懐いたみたいな姿


『…』

ぽつり、聞こえた声にを聞こえない振りをした


生きてる


そんな当たり前のことを嬉しそうに表情を
緩めるチカには何があったんだろーか

ハア、俺は溜息を吐き、チカの柔らかな
黒髪を撫でた

しばらくはこのままだろーな
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