意地悪な両思い

「それは、


たまたまだって。」
 たまたまって……。

「ごめんごめん。
もうちょっと喋りたい?」
 なだめるように、また私の頭をそっと撫でる速水さん。


その様子は、私の思惑とはずいぶんとかけ離れてそうで。

「いや、そうじゃなくて。」

「ん?」
 違うの、ちがう。
お喋りじゃなくってさ。

どうやったら伝わる?
大丈夫だって、もう気持ちは落ち着いてるからって。

こんな遠まわしじゃ、私のこの思いは伝わってなくって。



はやみさん。



「わたし―――」




「まだ寝たくない」
 この意味……分かるでしょ?



そうして、私は速水さんの首元に唇をそっとあてた。


「…っ」
 すると、逃げるように速水さんは仰け反って、

「あぁばか、くっそ。」
 私があてた首元に手をあてながら、

「あぁじゃぁもう俺が寝る!
俺は寝る!


好きな時に寝ろ!」
 何か葛藤するようにひとり枕にうつ伏せになって、頭をこすりつける。


その様子は、誰がどうみたって、私が見たって、
なにか我慢してる。


速水さん――――



私に手を出すのを我慢してる。



だから、もういっかい、
私は速水さんの体を無理やりはぐって、


「ちゅ。」


 唇を。

ついで、その耳も奪った。


「いちた。
ばか、怒るぞ。」
 そうしたって、変わらず速水さんは一向に防御するだけ。

「なんで?
手……だしてよ。

速水さんキスして?」
 ここまでくると、
私ってもしかして魅力がないんじゃないかって落ち込んでくる。


「私だって、わたしだって」

あぁこんな恥ずかしいこと。
まさかわたし、速水さんに言うなんて。



「えっち……だもん。」


 かあああっと私の顔が真っ赤に染まるのと同時に、速水さんが私の上に覆いかぶさるのは寸分違わずだった。

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