意地悪な両思い

 さっきまでが嘘のように、
速水さんは私のいろんなとこに口づけを落としてく。

吐息が漏れるような激しいそれを、

私の唇、頬、おでこ、首。


私の足をつーっと指でたぐって、

「あっ、やだ、はずかしい……!」
 太ももの内側までキスしようと、私の足を肩にあげる。


「なに、聞こえないけど。」
 ちょっと怒ってるのか、一気に意地悪な速水さん。

流し目で、私を捕らえて

「市田ちゃん、えっちなんだもんね?」
 くすっと嫌らしく私を瞳で捕らえていじめる。



あぁもう。

「ばか、ばか。」
 恥ずかしくて、両手で顔を隠すも、

「だめ。」

「あっ。」
 私の腕を彼は掴んで、それすら許してくれない。


「うぅ……」
 せめて手を解放してほしくて意地らしく見つめたけど、
今の彼には効かないみたい。
もう一度彼は口づけを落として、私の服に優しく侵入してくる。

よりにもよって、
冷たい私の肌に温かい彼の熱が余計目立った。


漏れる吐息、熱。
恥ずかしい声が度々漏れて、どうしたらいいか分からない。


「観念した?」
 するといじめ過ぎたと思ったのか、私の頭を優しく撫でる彼。


でもわたし、後悔はしてないの。
そりゃ速水さんのハードな行動に白旗状態だけど。


「だって……、速水さん
あのままだったら何もする気なかったんでしょ?


それは、や…だったんだもん。」
 はずかしくて、私は彼の手に軽く顔をうずめる。


そんな私に、

「あぁもう。」
 違う意味で速水さんも白旗?みたいで。


「ごめんちょっと、やばい。」

「へ?」

「もう、市田のばか。」
 なんだかおかしな速水さん。


 ばかって言われてるはずなのに、なんでだろな。


「好きにしか聞こえないよ。」


 私は彼の背中に腕をまわした。

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