意地悪な両思い

「で?雨宮さんの所手伝ってんの?」
 書店から10分ほど車が進んだところだった。

意外にも速水さんから聞いてきた、今日雨宮さんと仕事してた?って。


「今わたし落ち着いてるんで。」
 それに雑務ですし―――しなくちゃいけないことだけど、でもするのは面倒なそんな感じの。

「速水さん下の部署にいるところ見てたんですか?」

「見てたんじゃなくて、見かけたの。
まぁそういう理由なら納得だけど……。」
 信号が赤で止まっている為、速水さんはじっと私を見つめる。


「大丈夫か?」

「え?」

「いや、そういうのが一番疲れるだろ?
器用じゃないのに、長嶋のヤツ……。」
 はぁと彼は一息こぼす。

「大丈夫ですよ!
それにほら!内川くんだってしてたじゃないですか、前。」
 一時彼も下の部署の手伝いしに行ってたんだよね。

「いやあれは、完全貸出しだったから。
それでも俺躊躇ったのに、アイツもいろいろ下手なとこあるから。」

「うん。」
 いろいろ下手かぁ。
彼の不器用なやさしさにくすっと思わず笑いがこぼれる。


「いつまですんの?」

「んー、来月新しく仕事が入るんで、それまでですかね?
商店街のイベントが入って!」

「てことは丸々1か月ぐらいか……。」
 彼はそこで口の端を軽く緩める。

「その仕事早くしたくてたまらないって顔してるけど?」

「えへへ!」
 彼はポンと私の頭を撫でる。

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