エリート御曹司とお見合い恋愛!?
 逸る気持ちを抑えながら、私はエレベーターに乗り込む。五十四階のボタンを押して、早く、早く、と願った。行儀が悪いのは承知でバーの扉を開けると、私は一目散にカウンターに駆け寄った。

「宮川さん!」

「美緒ちゃん、わざわざ悪いね」

 私の顔を見ると、宮川さんは驚いたような顔を見せてから苦々しく笑った。他のバーテンダーに断りを入れて私を手招きすると、スタッフ用の通路のところまで足を進めた。

「ごめん、他に誰に連絡していいか分かんなくてさ。今日は金曜日で俺も忙しいから、なかなか仕事が抜けられなくて」

「そんな、謝らないでください。それで……倉木さんは?」

「とりあえず五十一階のホテルの一室で休ませてるよ。週末ってことでわりと満室で、かなりいいところしか空いてなかったけど。まぁ、あいつ金はあるし。仕事も忙しいのに、寝不足もあったんだろうけど、どうも熱が高いみたいで」

 倉木さんの携帯から連絡をくれたのは宮川さんだった。なんでも、ひとりでバーに来ていた倉木さんが、どうも調子が悪そうで、熱がありそうだというのだ。

 今にも倒れそうな倉木さんをひとりで返すわけにもいかず、ホテルの部屋で休ませて、悩んだ結果、私に連絡してきてくれたらしい。

 ルームキーを預かり、私はホテルのフロアに足を進める。倉木さんが体調を崩すなんて珍しいと宮川さんも笑っていた。

 もしかして仕事が忙しいのに、私に付き合わせてしまっていたからだろうかと不安が襲う。今は倉木さんと会う気まずさよりも、心配な気持ちの方が大きくて迷わずルームキーの部屋を目指した。
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