おはようからおやすみまで蕩けさせて
そんな女よりも結実のことが好きだったんだよ、と言ってしまえれば簡単だけど、それじゃあこれから先の結実の立場が危い。


「どうも何も、お互いに片思いをしてたのがこの最近わかったんだよ。それで、なるべく早く一緒になりたいと思ったからプロポーズしただけ」


女子達が唖然としている。
実際のところ結実はまだその気も無さそうだったけど、俺の方が彼女を好き過ぎて、他の男に取られる前に自分のものにしておきたかった。


「俺だけじゃなくて彼女のことも変わらず頼むよ。結婚式や披露宴の案内はまた折を見て出すから」


作り笑いをしてその場を逃れ商談のブースへと戻れば各テーブルではメーカーから持ち込まれた商品が並び、熱心に売り込まれている。
必死な表情で挑む開発担当者の姿を眺め、移動して行く先で鋭い言葉を吐く女性を見つけた。



「この材質じゃ溶けやすくないですか!?それなりに長く使える物を作らないと、安くても誰も買ってはくれませんよ!?」


直ぐにゴミになる様な物は誰も買わないと切り捨てている。
メーカー側は渋い顔を見せ、どうすればいいんだよ、といった感じだ。



(頼もしくなったもんだな…)


七年前に来たばかりの頃とは比べものならない。
すっかりバイヤーらしくなった結実を見直し、これなら俺が居なくなっても十分やっていけるだろうと思った。



「そのくらいにしといてやれよ」


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