苦い蜂蜜
ここだよ。と真山さんが指をさしたのはボロボロの部屋だった。明かりもついてないみたいで普段のまひろらしくない雰囲気だった。

入るのが躊躇われるくらい怖い。
真山さんがそれに気づいてそっと先に入った。

ーまひろ。何やってんだよ。

「何って仕事。麻里奈たちにはいってねーだろーな?」

ー言ってはないけど。

真山さんがそっと私の背中を押した。勢いで私はまひろの目の前に立った。

「なんで、いるの?」


「ご、ごめんなさい。気になって。」

私の予想とは裏腹にまひろは白衣を着ていた。小さく溜息をついて仕方ないなと呟く。

沈黙した空気の中で一連のまひろの動作を見つめながら、私はふと思った。

この仕事って、、、?

「闇医者って言ったら殴る?」

予感は的中した。ううん、と私は首を振った。看護師としてここは振ってはいけないとは思うんだけど。

「伽耶ちゃんが寂しそーにしてたから連れてきちゃった。ごめん、まひろ。」

これは、三人の秘密な。

そう言ってまひろは大きく伸びをして窓を開けた。まだ外は薄暗い。

まひろの背中を見つめてたら、真山さんがそっと私の両肩に手を置いた。

「俺、急用あったんだった。じゃ。」

そういって私たちを残したままで真山さんは走るように逃げていった。

私たちは2人きりになった。

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