【完】君しか見えない


十羽が、俺の背中に額を押し当てた。



「楓くんに告白してもらえて、すごくすごく嬉しかった。
楓くんへの思いはこのまま胸に秘めておくつもりだったから。
でもずっと罪悪感があった。
別れがすぐ来ることをわかってて、付き合ってもいいのかなって。
つらい思いさせて、ごめん……」



「そんなこと、言うなよ……」



おまえが謝ることじゃない。


だって俺は、幸せだったんだよ。



「ありがとう。
楓くんと同じ時間を過ごせて、毎日すごく幸せだった」



じんわりとつぶやく十羽。



「楓くん」



名前を呼ばれて、振り返る。



すると十羽がいたずらっぽく笑いながら、おどけた様子で言う。



「私、約束破ってばっかりの嘘つきなだめだめ幼なじみだったね。
今度は、こんな女の子に引っかかっちゃダメだよ?
楓くんモテモテだから、心配だなぁ」

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