【完】君しか見えない
「……十羽」
その名を呼べばガクンと膝が折れ、ベッドの横に膝をつく。
そして点滴が刺さった白い手を握りしめた。
力いっぱい握ったら壊れてしまいそうなほど、脆く思える。
だけど再会してからずっと冷たいと感じていたその手には、今はたしかな温もりが宿っていた。
それでやっと、十羽が生きていると強く実感できた。
「……ごめん、俺のせいで。
痛かったよな」
そっと頬を撫でてやっても、嬉しそうに目を細めてはにかんでくれることはない。