【完】君しか見えない
ここに、十羽がいる。
俺はドアの取っ手に手をかけ、そして躊躇うことなくドアをスライドさせた。
瞬間、病室に蔓延していたツンとする消毒液の匂いが鼻をつき、機械音が耳に響いてきた。
視界に飛び込んできた真っ白な部屋の中──カーテンの向こうにベッドがかる。
足が自然とそちらへ進んで行く。
そしてシャッと音を立て、カーテンを開けた俺は思わず息を飲んだ。
ベッドの上に、十羽が寝ていた。
体のあちこちを包帯で覆われ、大きな酸素マスクをつけて目を閉じている。
小さい頃からあまり風邪を引かず、健康体の十羽しか知らない俺は、予想以上のダメージをくらっていた。
現実は、さっき話してくれた千隼くんの言葉よりもずっと、痛々しくて残酷だった。