円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
だから、彼は自分の雇人のことを、本当によくわからない人たちだと思っている。
何でも序列を作るし、くだらないことにこだわる。
ジョンから見れば、自分でルールを作って、そのルールに縛られてる奇妙な人たちなのだ。
まさに、このお嬢さんもそうだ。
この暑いのに、首から足元まである、分厚い生地のドレスを着ている。
この人たちの世界は、本当によくわからない。
「このくそ暑い日に、よくそんな首まで詰まったドレスでいられるな」
「だって、長袖じゃないと日に焼けるって……」
ジョンが笑い出した。
「そりゃ、エリノアさん、顔見てから言った方がいいぜ」
いちいち、簡単なことを複雑にしてしまうのは、本当に、くそ暑いし面倒なことだとジョンは思う。