円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
菜園での作業は、とても楽しかった。
毎日の世話は欠かせないが、手間がかかる分収穫できたという喜びは大きい。
エリノアは、家の中に閉じこもって刺繡してるくらいなら、こうやって植物の成長を見ていたいと思っていた。
エリノアは、アストンハウスと言われる屋敷に住んでいる。
何世紀も前に立てられた、石で出来た頑丈な建物の背後を見上げた。
領地の外れまで、なだらかな緑が続いていて、その先に緩やかな丘がある。
そっちの方の空を見ていると、真っ黒い雨雲に覆われているのに気が付いた。
ジョンの言う通りだった。
雨雲がかかっているあたりには、侯爵家の広大な領地が広がっている。