円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「エリノアさん、すぐに一雨来るぜ」
ジョンも雨雲の方角を見上げていた。
「そのようね」
彼の野性的な勘も捨てたものではない。
やっぱり、収穫を急いでよかった。
ジョンは、人の気持ちなど、さっぱり理解しようとはしないが、天気の変わり目や雲の流れを読み、風の向きで肌で感じるのは得意だった。
今度も、見事に予測していた。
雨雲の流れを予測するのは、学者のように理論的でなければならない。
いつの間にか、侯爵家の領地の上の雨雲も大きくなって来た。
もう、一時間もすれば雨が降ってくるだろう。
「さあ、片づけて屋敷に帰りましょう」
エリノアは下男たちに声をかけた。