円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~


「エリノアさん、すぐに一雨来るぜ」
ジョンも雨雲の方角を見上げていた。

「そのようね」

彼の野性的な勘も捨てたものではない。

やっぱり、収穫を急いでよかった。


ジョンは、人の気持ちなど、さっぱり理解しようとはしないが、天気の変わり目や雲の流れを読み、風の向きで肌で感じるのは得意だった。

今度も、見事に予測していた。

雨雲の流れを予測するのは、学者のように理論的でなければならない。


いつの間にか、侯爵家の領地の上の雨雲も大きくなって来た。

もう、一時間もすれば雨が降ってくるだろう。

「さあ、片づけて屋敷に帰りましょう」
エリノアは下男たちに声をかけた。
< 15 / 195 >

この作品をシェア

pagetop