円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
ウィリアムは、手綱を握りながら
いろんなことを考えていた。
これまで、自分はエリノアの兄の立場に
いると思っていた。エリノアに関する
ことなら、彼は、なんでも口を出す
権利があると思っていた。
彼女の将来、どんな女性になって
欲しいか?
ウィリアムがいいと思う女性になって
欲しかった。
彼は、従順なものを言わない大人しい女性は好きではなかった。
勝ち気で自分の意見を言ってくる
娘の方が好きだった。
エリノアは、充分そういう女性に
成長した。
誰のもとに嫁いでいくのか?
もちろん、立派な紳士以外にない。
彼女の夫となるならば、すべての条件を
備えていなければならない。
すべて自分に決める権利があると思って
いた。
しかるべき相手を見つけてやって、
育った以上の環境で、何不自由なく
生活させてやりたい。
エリノアは全くと言っていいほど、
将来誰を夫にするのかということに、
興味を示さない。
彼女が、無頓着なのをいいことに、
持ちかけられる縁談を、全部邪魔してきたのではなかったのか?
彼のもとに、エリノアを嫁にどうかと
打診してきた紳士がいたが、ウィリアムは、すぐに断ってしまった。
自分より劣る家系のものにエリノアを
やるわけにはいかない。
いいや。そうじゃない。
自分以外の、男に彼女を嫁がせる
つもりはない。