円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
街道沿いに並ぶ、家の間隔が狭まって来た。

もうすぐ町も近い。

町に入ったところで、幸運にもエリノア達の馬車が前を走っているのが見えた。


ウィリアムは、馬のスピードを緩め、馬車の後について行った。

もし、町を抜けるようであれば、そこで声をかけよう。

彼は、そう思った。


だが、馬車は、しばらく行くと街道からそれ、町の外れに向かう道に進んでいった。

港とは反対の方向に進んでいく。

ウィリアムは、じっと我慢して馬車が止まるまで待とう。

森の中を抜け、細い小道に入って行く。

小さな建物が見えて来た。

どこに行くのだ?

診療所か?

やがて、ジョンが馬車を止め、馬車の扉を開けた。

馬車の扉が開いてから、ずいぶん時間が経っているのに、誰も中から出てこない。

とどまったまま出てこないと思ったら、出て来たのは、エリノアとトーマスだけではなかった。


「どういうことだ?」

ジョンとトーマスが、抱えるようにして女性を馬車から出した。

そう言われてみれば、ここは町の病院だ。

誰か具合が悪いのか?

ん?

あれは、ミーガンではないか?

二人の男がメイドの女性を両方から支え、エリノアが心配そうに後からついていく。

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