円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
エリノアは、馬の背に乗せられ、
もと来た道を戻った。
背中にウィリアムの体温、
頭の上に彼の息遣い
それから、体の全体で彼の存在
そのものを感じる。
「寒くないか?」
「はい」
「これから、伯爵家へ戻るんですか?」
エリノアは、振り返って、彼の顔を
見ようと思ったけれど、顔の位置は、
もう少し上にあって、見上げないと彼の
顔は見られない。
幼い頃は、こうしてよくウィリアムに
馬に乗せてもらった。
外に出かけることが大好きだった
エリノアは、姉のメアリーよりも
ウィリアムと一緒にいる機会が多かった。
「いいや。まっすぐ向かう訳では
ないよ。ちょっと、
寄るところがあるからね」
彼は、よく聞こえるように、顔を彼女の
耳元に近づけて言う。
寄るところって?
冬枯れの殺風景な季節の中、どこに
向かうというのか?
エリノアは、もう一度振り返って聞こうと思ったけれど、聞くのを止めた。
エリノアは、従兄の性格を十分理解して
いた。
まともに尋ねても、絶対に答えてくれないだろう。
彼の言う通り、もと来た道からそれて行き、しばらく畑の中を進んだ。