円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
雨が降ってくるまでに作業を素早く済ませたい。
あのまま、メアリーに付き合っていたら、収穫がもう一日遅れていた。
さっさと抜け出してよかった。
後で、文句を言われるかもしれないが、こういう時は、収穫の方を優先した方がいい。
エリノアは、小さなジャガイモが土の中に紛れていないか、丹念に掘り返した土の中を手で探った。
芋を掘るために屈んでいた体を伸ばし、もう一度自慢の菜園を眺める。
彼女は、おおかた掘り返した畑を見渡し、一息ついた。
ここは、彼女の屋敷の裏地に作った菜園だった。
本当は日当たりのいい、屋敷の前に作ろうと思ったのに、母に猛反対された。
菜園というと、お花のついでに野菜でも植えているのか?と思われがちだ。
エリノアは、違った。
彼女は、いったんやりだすと熱中する方だった。
種をもらった品種が、安定的に取れるようになると、
今度は、難しくて安定して作れない作物や、
作ったことのない作物に関心がいくようになった。
方々から種を集めて、作付を試してみる。
それで、芽が出て収穫できると、それが楽しくて仕方がない。