キス税を払う?それともキスする?
「どうして起こしてくれなかったんですか。」

 遅くなってしまった帰り道。
 奥村のアパートまで二人は歩いていた。

「君はあまりにも疲労困憊がはなはだしい。
 しばしの休息が必要不可欠だ。」

 疲れていたようなのは事実だ。
 それで起こせなかったのも一理ある。

 しかし本当の理由は別にあった。
 南田は遠くをみつめながら考えるような口ぶりで話し出す。

「何故、人は嬉々として認証するのか。」

 奥村さんと契約を締結し、認証さえできればいいと…。浅はかだった。

「僕には理解しがたい。」

 認証すればするほどに苦しくなるばかりだ。

「君は…一向に緊張がほぐれる様子もない。」

 特に奥村さんに関しては認証さえなければリラックスしていた。
 そう仕向けたのは自分だ。

 だが、あそこまでとは…。

 それでも僕たちから認証を取ってしまっては関係が消滅してしまう。

 南田は答えが出ないまま、次の約束も取り付けれずに奥村のアパートの前で別れた。

 僕はどうしたいんだろうか。
 このまま奥村さんを囚われの身にさせるような真似をしていていいのだろうか…。
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