キス税を払う?それともキスする?
 リラックスするはずのDVDはなんの効果もなく拷問のような時間が過ぎた。

 しばらくしてクッションにもたれかかてきた奥村にドキッとすると、スースーと規則正しい息遣いが聞こえた。

 そっとソファから離れ確認する。
 やはり気持ち良さそうな寝顔がそこにあった。

 無防備過ぎる…。

 奥村のことがますます分からなくなり、離れたソファに座り直すとうなだれた。
 目の端に可愛らしい寝顔が映る。

 自分の髪をくしゃくしゃとかき回した。
 心を落ち着けたかった。

 そして意を決して立ち上がるとまた奥村と同じソファに舞い戻った。

 すぐ近くにある寝顔をのぞきこむ。

 規則正しい寝息と共に肩が小さく上下していた。
 そっと柔らかそうな頬を触るとその柔らかな感触にドクンと心臓が波打った。

 こんなに柔らかい頬に眼鏡など当ててはいけなかったな。

 眼鏡を外すと、そっと頬に優しく触れてから、くちびるを重ねた。

 ピッ…ピー。認証しました。

 壁から無機質な音が出て、胸を痛くさせた。

 認証…。
 僕たちの関係は全てそれに尽きる。

 奇しくも時計の針は12時を回ったところだった。
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