キス税を払う?それともキスする?
 玄関に入ると南田は、はぁーっと盛大なため息をついた。

 あの惨事を見せるのか…どうするんだ。

 そう困っているはずなのに、やはり奥村を見ると自分の気持ちに抗えなくなる。
 しかも自分のマンションに今は二人っきりだ。

 その事実にドクンと胸が波打つと振り返り奥村に近づいた。
 後退りしたって逃さない。

 顔をのぞきこんで目を合わせると急激に愛おしさが増す。
 この幸せなひと時を味わうように、ゆっくりと顔を近づけた。

 すぐ近くまで迫っても目を閉じない奥村につい息が漏れる。

「目は閉じないのか?」

 それでも固まっている奥村がたまらなく可愛かった。

「まぁいい。」

 触れてしまいそうなほど近くでつぶやく。

 やはりこの距離での会話がたまらない。
 …もう変態だろうと構わない。

 そっと柔らかくくちびるを触れさせると、名残惜しいがすぐに離した。

 ピッ…ピー。認証しました。

 奥村は音とともに崩れるようにその場に座り込んでしまった。
 つかもうと差し出した南田の手が空を舞う。

「大丈夫か?
 しかし…しばらくここにいてくれ。」

 そう言うと奥村を置いてリビングの方へ向かった。


 リビングのドアを閉めると顔が熱くなるのを感じた。
 何度目だろうと重ねただけで、へたり込んでしまう彼女の純粋さにこちらが照れてしまう。

 しばらく幸せな気持ちに浸ったあと、とにかく嬉しい気持ちは置いておいて片付けなければと行動を開始した。
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