キス税を払う?それともキスする?

第16話 絶望

 あの出来事の答えは出ないまま朝を迎えた南田は早くに出社した。

 何故か奥村の出社も早かった。

「おはようございます。」

 いつも通りの挨拶に「あぁ。おはよう」としかいえなかった。

 南田は奥村が何を考えているのか、全く分からなかった。


 午後からの仕事では珍しく奥村は心あらずだった。
 容赦ない厳しい言葉を浴びせても何も響いていないようだ。

 朝は普通だった。何故だ。

 ますます理解できない南田はため息をつく。

「らしくない。何を言っても食らいついてくるのが君の取り柄なのではないのか?」

 けなしたつもりだったのに、ただ耳をすり抜けていくだけようだった。

「もう定時になる。今日は帰れ。
 …僕も今日は帰ろう。」

 南田の言葉通り定時を告げるチャイムが流れた。
 奥村は抜け殻のまま帰り支度をしていた。
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