キス税を払う?それともキスする?
 気づくと寝てしまっていたらしい自分に奥村が上着をかけてくれていた。
 そして南田のかけたまま寝てしまっていた眼鏡がそっと外された。

 奥村はまだ眠っていると思っているようだった。

「やっぱり無表情変換スイッチなんてついてないよね…。」

 不可解なつぶやきに笑いそうになるのを堪えていると、もっと驚く声が聞こえた。

「そう言えば…最近は頬に眼鏡が当たらないなぁ。」

 どういう…。
 そう思っていた南田のくちびるに柔らかい何かが触れた。

 ピッ…ピーッ。認証しました。

 壁の機械から音が聞こえ、それがなんなのかの答えをくれた。

 ガチャ。バタン。

 奥村が出ていた音がした後は、シーンと静まり返ったリビング。

 少ししてゴソゴソと動く音とともに南田にかけられた上着は顔を隠すように頭まで移動された。

 今のは…なんだったんだ。
 奥村さんも所望しているということだろうか…。

 ガバッと起き上がった南田は熱いシャワーを浴びることにした。
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