キス税を払う?それともキスする?
「ねぇ?あの人かっこよくない?」

「一人で認証の機械の前にいるよ?
 キス待ちじゃない?」

 道行く女の子のグループがこちらを見ている。

 まずい…。
 面倒なことにならなきゃいいが…。

 それでもこの状態の奥村を置いていくわけにはいかなかった。

「すみません。キス待ちですか?」

「いや。そのようなものではない。」

 怪訝そうな声を出しても無駄だった。
 キャーかっこいい!と騒いでいる。

「認証の機械の前に立ってキスしてくれる人を募集するのが、今流行ってるんですよ!」

 はぁ。面倒だ。
 どうしてこうどうでもいい奴は寄ってくるんだ!

「キス待ちじゃなくてもいいんで、私たちと認証しませんか?」

「間に合っている。」

 面倒でぶっきらぼうに言っても全く効果はない。
 かっこいいだのクールだの言いながら騒いでいる。

「彼女さんいるんですか?
 いいじゃないですか〜。認証くらい。
 減るもんじゃないですよ。
 私、こんなイケメンとできるなら宝物にする〜!」

「ヤダ〜大袈裟〜!
 でも私もキスしたい〜!」

 全くどうするんだ!
 だいたい奥村さんもそこにいて何も感じないのか。

 なんとなく蹴りを入れたい気分になって、奥村の体に軽く脚を当てる。

「迷惑だと言っている。」

 怪訝そうな声を重ねても全く動じない女の子たちにうんざりする。

「いいじゃないですか〜。
 キスの一つや二つ。」

 退散するどころか、さっきよりも近づいて迫ってくる。

 もういい。この際だから言ってやる。

「僕は好きでもない人とはしない。」

 例え奥村さんに聞こえたって構わない。
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