キス税を払う?それともキスする?
 この言葉は効いたようだ。

 相容れない様子に諦めたのか
「ざんね〜ん!」
「いい男は簡単にはしてくれないって!」
「ケチ〜。」
 様々な文句を言って立ち去った。

 はぁとため息とともに奥村の隣に座る。

「全く。君のせいでとんだ目にあった。
 …そもそもは僕のせいだが。」

 そうだ。僕のせいだ。何もかも。

「まだ泣いているのか。悪かった。
 僕に関わると迷惑をかける。
 だから離れたのだが…関わった以上は離れてはいけなかったようだ。」

 迷惑かもしれない。
 また泣かせてしまうかもしれない。

 でも…。

 やはり僕は君の側にいたい。
 君に側にいて欲しい。

「契約を…今一度結んでも構わないだろうか?」

 コートを持ち上げて南田は奥村を見たかった。

 気持ちを伝えよう。
 僕は君が…奥村さんが…。

「おい!南田!お前、まだ帰るなよ!
 部長が探してたぞ。」

 お店の方から呼ばれた声にサッとコートでまた奥村を隠す。

「おいおい。
 そんなところに座り込んで大丈夫か?
 顔、真っ赤だぞ。
 南田ってそんなに酒弱かったか?」

 呼びに来た山本さんに手を引かれ連れていかれる。

 顔が熱いのは自覚している。
 今…気持ちを…。はぁ。

「いえ…。
 少し風に当たりたかっただけで。」

「なんだ声もしどろもどろだぞ。
 相当飲まされたな!」

 ハハハッと笑われて肩を組まれた。

 なんて間が悪いんだ。山本さんも部長も!



 宴会会場に戻ると吉井に声をかける。

「外に奥村さんがいるんだ。
 見に行ってくれないか。」

 無言で頷いた吉井が外に向かうと安心して部長の元に行った。

 忘年会が終わると吉井が奥村は帰ったことと、寺田には押さえつけられた以上のことはされていないことを聞いた。

 その事実に南田は胸をなでおろした。
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