キス税を払う?それともキスする?
「不特定多数の人と接触しなくても、既にキス病の抗体を持っていたら、なんの意味もないですよね?」

 華は当然の疑問をぶつけた。キス病のことはなんとも思わないのかな。

「そこは当然の礼儀として検査済みだ。」

「え…。私は検査なんてしてませんけど…。南田さんの結果はどうだったんですか?」

「陰性なのは言うまでもない。」

「陰性ってどっちが陰で陽なのか分からないです!」

 この人、本当に頭いいのかしら。

 頭いい人って分かりやすく説明できるものじゃないのかな。

 だいたい。南田さんだって仕事のアドバイスをくれた時は普通だったのに。

「抗体を持っているわけがない。」

「日本人の90%ですよ?本当に10%の方なんて。
 …そんなことより私が抗体を持っていたら感染するんですよ?
 大人になってからだと重篤化するって…。」

「そうだとしたら幸甚の至りだ。」

 南田がボソッと言った言葉は小さくて聞き取れない。
 という問題ではなく全くもって理解できない単語だった。

「大事なことです。きちんと話し合えるように難しい言葉を使うのはやめてください。」

「もう遅緩だと言っている。既に何度かしているんだ。
 感染しているのなら既にしているはず。考えるだけ無駄というものだ。」

「ちかん?」

 …ちかん…痴漢?

 眉をひそめた華が何と勘違いしたのか分かったような苛立った声がした。

「遅緩だ!遅く緩やかと書く遅緩!」

 やれやれとため息をつく南田に、華は頭が痛くなりそうだった。

 やっぱり南田さんと普通に会話なんて無理!
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