キス税を払う?それともキスする?
 次の日の朝、南田のマンションから帰るのが遅くなってしまった華は久しぶりに眠かった。

 それでも南田の残業時間を見てみたくて早く出社していた。
 昨日は残業していたけど、やっぱり他の日も気になったからだ。

 しかし部署に行く途中で華は言葉を失うことになった。

「!」

 驚きのあまり物陰に隠れる。しばらくしてため息混じりにつぶやいた。

「朝から会社でって…。」

 華が目撃したのは、会社で認証している人。

 しかもそれは「派遣の女は使い捨て」と言っていた寺田と相手は派遣の子で「仕事はいい男を見つける手段」と言っていたペアになった二人だった。

 もう付き合い始めたってこと?さすがだわ…。

 華は頭痛がしそうだった。

 会社で認証なんてどうかしてる。そう思って、またため息が出た。自分こそ…。それ以上考えるのが嫌になって首を振る。

 とにかく会社での認証はやめた方がいいに決まってる。抗議しなくては。

 認証していた二人が仲良く職場へ向かったことを確認してしばらくした後に華も職場へ重くなってしまった足を向かわせた。

 ずいぶん早く来たつもりだったのに、南田は既に席にいた。

 もしかして夕方からの残業だと私に残業してるのがバレちゃうから、朝早く来てるってこと?…いやいや。だからバレちゃダメなわけじゃないし。

 そう思っても「残業するやつは無能」と言っていた南田に残業してるんですか?などと聞きにくかった。

「おはようございます」それだけ言うとまたヘルプデスクに向かうことにした。
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