キス税を払う?それともキスする?

第23話 忘れる?

 可奈は華が気落ちしていることを感じ取って、いつも励ましてくれていた。
 それでも華はそれに応えることができずにいた。

「華ちゃん。前に倒れたことあるでしょ?」

「うん。」

 そういえばその時に南田さんと…。
 ううん。そんなこと、もうどうでもいい。

「その時に南田さんが医務室に運んでくれたんだよ。」

「え…嘘…。」

 確かに目を覚ました時は南田さんが側にいたけど…。

「倒れた華ちゃんを責める人なんて誰もいないのに、南田さんが華ちゃんを庇ってさ。
 医務室に運んだ後に、奥村さんが倒れたのは僕のせいです。って。」

 な…んで…。

 確かにそうだけど、特にその時は急にキスされた最初の頃で、振り回されて寝不足で…でもそんなこと公言しちゃダメなはず…。

 混乱する華に可奈は続けた。

「華ちゃんは認証の機械を設計してたでしょ?」

「うん。」

 今となっては懐かしい話だった。

「南田さんは、そのことでどうしても知りたいことがあって深く聞き過ぎて討論になった。
 その時に泣かせてしまったから彼女に負担をかけて…。
 みたいなことを部長に一生懸命訴えてたんだよ。」

 そんなことを…。わざわざ…。

 だってそれは作り話だよね?

「その上、私が聞いてたことに気づいて、吉井さんの友人には秘密裏に。って言われたの。南田さんに。
 もうその時から余計に南田さんのファン!」

 可奈がキャッキャッしている声が遠ざかっていく。

 どうしてそんなことを…。
 それが南田さんの優しさだと言うの?

 華はますます分からなくなって、心に蓋をした。
 だって考えても答えは出なかった。

 可奈が一生懸命に何かを伝えてくれても、華は南田に希望なんて持てなかった。

 変わらずペアで一緒に仕事をしていても、あれ以来、仕事の話しかしていない。
 距離を置かれているのを嫌でも感じた。
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