討伐屋
第1章 死神
なぁ、"運命”って信じるか?人間が生まれて、誰と出会ってどんなことを思うか、死ぬまで全部決まってるってことだぜ?悪いが俺はそんなもん信じる気になんねぇ。だって、そんなのつまんねぇだろ?俺は俺のやりたいように生きて死ぬ…。なーんて、思ってたのにな。
「ふっ。バカみてぇ。」
あの頃の俺は自由にワガママに生きていた。アイツと出会うまでは―。
◇◆◇
「はぁっはぁっはぁっはぁっ‼ったくどこまで追いかけてくんだよっ‼」
暗い裏路地を転がるように駆け抜ける。後ろを振り返ると、闇にまとわりつかれている幽霊の真白な手が迫っていた。
「ちっ‼油断した‼塩足りねぇ‼」
俺は生まれた時から、いわゆる"見える体質"だった。しかも幽霊だけじゃなく、悪魔も見えた。普通の人間には見えないはずなのに。そして、俺は決まってそういうモノに襲われるのだ。だからいつもニンニクと塩は必ず常備していたのだが、まぁ、そんなものが少しの量で効くはずもなく、こうして逃げているわけである。
曲がり角という曲がり角を曲がってひた走る。それでもまだ追いかけてくる幽霊にうんざりしながら腕時計を見ると、時刻は午前2時。かれこれ3時間も逃げている。
「くっそ‼もうこんな時間かよ‼明日学校だってのに‼いや、もう今日じゃねぇかよ‼ちっ‼しゃあねぇ‼こうなったら大通り行くか‼」
ビルの壁を蹴って進路を変更し、大通りに全速力で出ていく。俺の予想通り、誰もいない。こんだけ広けりゃ、"アレ”使えるか?最終手段の奥の手を出そうとして、ふと思う。
「はぁっはぁっ‼やけにっ明るいな‼」
空を見ると三日月が夜空に輝いていた。そして、その月明かりに照らされて、白銀の鎌が鋭く光っていた。ん⁉鎌⁉よく見ようとしたその時鎌が、いや、鎌を持った人物が消えた。と同時に背後で爆音が聞こえた。
「なんだ⁉」
思わず走るのをやめて振り返ると、そこには鎌を持った少女がいた。幽霊が跡形もなく消えているところを見ると、コイツが消したってことか…?少女が左耳の上につけてある薄紫色の蝶型の髪飾りをさわって何やらしゃべる。
「討伐完了。一般人1名を救出。討伐時目撃されたため始末することを希望します。」
会話をしているってことはあの蝶は無線機か何かか?そんなことより鎌を持ってるって、死神とかそういうやつなのか…?いやでも、
「人間…だよな…?」
思わず口に出すと、少女が反応した。
「それは私に言っているのですか?随分と失礼な方ですね。」
仮面をつけていて少女の顔は見えなかったが、その冷たい口調から、俺のことを軽蔑しているのはわかった。
「だって、鎌、持ってるし。」
言い訳のように俺が言った瞬間、風が少女髪をゆらした。月明かりに照らされた、肩までしかない少女の髪は漆黒で綺麗だった。漆黒のロングコートをはためかせ、中央には薄紫色のブローチ。(恐らくこれでコートをとめているのだろう。)同じ漆黒の短パンに、そこから除く真っ白な肌と、膝まである漆黒のブーツ。そして白銀の鎌。いや、これは死神と疑ってもいいんじゃないか?
「あなたは、鎌を持っていては人間ではないと、そう言いたいのですね?」
少女が少し怒ったような口調で言う。漆黒のロングコートをはためかせ、膝まであるブーツを高く鳴らし、鎌の刃をこっちに向けて1歩ずつ近づいてくる。
「ちょ、待て待て、俺を殺す気か?」
1歩ずつ後ずさる俺。
「いえ、あなたにはいろいろ疑問がありますので。殺す気はありません。そう上からも命令されましたし。」
上?上って、なんか組織みたいな?俺、そういうの大っ嫌いなんだよな。
「はっ。つきあってらんねぇわ。」
そう言い残し、俺は全速力で走った。少女が追いかけて来ることはなかった―。
「ふっ。バカみてぇ。」
あの頃の俺は自由にワガママに生きていた。アイツと出会うまでは―。
◇◆◇
「はぁっはぁっはぁっはぁっ‼ったくどこまで追いかけてくんだよっ‼」
暗い裏路地を転がるように駆け抜ける。後ろを振り返ると、闇にまとわりつかれている幽霊の真白な手が迫っていた。
「ちっ‼油断した‼塩足りねぇ‼」
俺は生まれた時から、いわゆる"見える体質"だった。しかも幽霊だけじゃなく、悪魔も見えた。普通の人間には見えないはずなのに。そして、俺は決まってそういうモノに襲われるのだ。だからいつもニンニクと塩は必ず常備していたのだが、まぁ、そんなものが少しの量で効くはずもなく、こうして逃げているわけである。
曲がり角という曲がり角を曲がってひた走る。それでもまだ追いかけてくる幽霊にうんざりしながら腕時計を見ると、時刻は午前2時。かれこれ3時間も逃げている。
「くっそ‼もうこんな時間かよ‼明日学校だってのに‼いや、もう今日じゃねぇかよ‼ちっ‼しゃあねぇ‼こうなったら大通り行くか‼」
ビルの壁を蹴って進路を変更し、大通りに全速力で出ていく。俺の予想通り、誰もいない。こんだけ広けりゃ、"アレ”使えるか?最終手段の奥の手を出そうとして、ふと思う。
「はぁっはぁっ‼やけにっ明るいな‼」
空を見ると三日月が夜空に輝いていた。そして、その月明かりに照らされて、白銀の鎌が鋭く光っていた。ん⁉鎌⁉よく見ようとしたその時鎌が、いや、鎌を持った人物が消えた。と同時に背後で爆音が聞こえた。
「なんだ⁉」
思わず走るのをやめて振り返ると、そこには鎌を持った少女がいた。幽霊が跡形もなく消えているところを見ると、コイツが消したってことか…?少女が左耳の上につけてある薄紫色の蝶型の髪飾りをさわって何やらしゃべる。
「討伐完了。一般人1名を救出。討伐時目撃されたため始末することを希望します。」
会話をしているってことはあの蝶は無線機か何かか?そんなことより鎌を持ってるって、死神とかそういうやつなのか…?いやでも、
「人間…だよな…?」
思わず口に出すと、少女が反応した。
「それは私に言っているのですか?随分と失礼な方ですね。」
仮面をつけていて少女の顔は見えなかったが、その冷たい口調から、俺のことを軽蔑しているのはわかった。
「だって、鎌、持ってるし。」
言い訳のように俺が言った瞬間、風が少女髪をゆらした。月明かりに照らされた、肩までしかない少女の髪は漆黒で綺麗だった。漆黒のロングコートをはためかせ、中央には薄紫色のブローチ。(恐らくこれでコートをとめているのだろう。)同じ漆黒の短パンに、そこから除く真っ白な肌と、膝まである漆黒のブーツ。そして白銀の鎌。いや、これは死神と疑ってもいいんじゃないか?
「あなたは、鎌を持っていては人間ではないと、そう言いたいのですね?」
少女が少し怒ったような口調で言う。漆黒のロングコートをはためかせ、膝まであるブーツを高く鳴らし、鎌の刃をこっちに向けて1歩ずつ近づいてくる。
「ちょ、待て待て、俺を殺す気か?」
1歩ずつ後ずさる俺。
「いえ、あなたにはいろいろ疑問がありますので。殺す気はありません。そう上からも命令されましたし。」
上?上って、なんか組織みたいな?俺、そういうの大っ嫌いなんだよな。
「はっ。つきあってらんねぇわ。」
そう言い残し、俺は全速力で走った。少女が追いかけて来ることはなかった―。