BAD & BAD【Ⅱ】
師匠は慌てて、京ママの肩にかかっていたタオルで京ママの髪を拭いてあげた。
仲いいんだなぁ。
昨日の私と真修みたいだ。
「いつもめんどくさがらずに乾かしてって言ってるのに」
「乾かしてる時間が惜しいのよ」
「言い訳は?」
「……禁止、だったわね」
京ママは思わず、笑みをこぼした。
幸せそう、だな。
微笑ましい家族の雰囲気に触れる度、心臓がえぐられる。
京ママが何も知らないからこそ、余計に、師匠の傷の深さを思い知らされる。
「……京くんがいきなり、髪を金色に染めてピアスを開けて『不良になる』って言った時は、どうなることかと思ったけど……」
髪を大分乾かせたのか、京ママの頭からタオルが離れる。
京ママは目を伏せながら、グラスに日本酒を注いでいく。
「心配いらなかったみたいね」
「え……?」
「今の京くん、前よりずっと生き生きしてるもの」
京ママは師匠が不良であることを認めていて、師匠も京ママのことを尊敬している。
傍から見たら、仲睦まじいありふれた家庭だ。
それなのに、現実はひどく哀しいもので。
神様はいたずらに亀裂を生じさせてしまう。