BAD & BAD【Ⅱ】
赤い糸やら、運命やら、ポエミーな話題をしてきたけど、唄子ちゃんはずっと恋の話をしていた。
私は恋だけじゃなくて、友情や日常も想像してたけど。
「勝手に勘違いしないでくださいね?」
気づけば、体育の授業などで使う用具をしまっている、体育倉庫の近くまで来ていた。
唄子ちゃんはガラッと体育倉庫の扉をスライドさせる。
無用心だな。ちゃんと鍵かけとけよ。
「自分がひろちゃんの特別だって」
「唄子ちゃ、……っ!?」
軽く肩を押されたせいで、否応無しに体育倉庫の中に踏み入れる。
意外と力あるんだね……じゃなくて、い、いきなり何!?
「特別なのは幸珀先輩じゃなく、このあたしです」
――バタン。
唄子ちゃんが笑顔で閉めた、扉の乾いた音が、やけに大きく響いた。