BAD & BAD【Ⅱ】
だから、あきらめて。
……なんて言ったって、どうせあきらめてはくれないんでしょう?
そのくらい、今の善兄の表情を見れば一目瞭然だ。
『愛してるよ、幸珀』
善兄の手が、私の頬に添えられた。
触れた部分から、善兄の正常ではない溺愛が私を蝕んでいく。
手を剥がすだけなら、なんとかできたかもしれない。
でも、できなかった。
体に力が入らなくて、声も出なくて。
神経や精神すら閉ざされてしまったみたいに、何もできないんだ。
強さに隠れていた弱さを、実感してしまった。
撫で回された頬に、拒否感が走る。
『永遠に』
やめてよ。触らないで。怖い。
私を、自由にしてよ。
狂った愛情も、永遠の誓いも要らない。全部全部、ボロボロに壊れてしまえばいい。いっそ、自分の手で壊してしまいたい。