俺を好きになってよ。

「まぁ、座りたまえ」

言われるまま、私と南はお父さんの前のソファに腰掛けた。


「いつから交際を?」

「あ…今日から…です」

「どうして南なんだ?」

「え?」

「南を好きになった理由を教えてくれ」

「ちょっと、父さん!」


南のお父さんがどうしてそんなこと聞いてくるのか不思議だった。



…でも、何となく分かる気がする。


大切な母親をなくし、女の子をとっかえひっかえな毎日。

当然、女の子は南を好きになる。

だけどそれは、本当は中身を見てなくて…


南の顔だけを好きになっていて



…まぁ、本当に顔だけの人とは限らないと思うけど…。



でも、お父さんは愛する人を亡くしたからこそ、南には傷ついてほしくないんだと思う。




「…正直、佐野くんは女好きで遊び人でチャラくて苦手でした」

「……りっちゃん…」

「だけど、佐野くんには色々助けてもらって…。優しくて、男らしくて…いつの間にか惹かれていたんです。…だから、今度は私が守りたいんです!一緒にいたいんです!」


そこまで言って我に返る。



あ、静か。


私南の両親に変な人って思われてない!?



フッと誰かが吹き出す音がして音の方を見ると南のお父さんが笑っていた。



え、あの…。



「はははっ、面白い女の子だな〜!随分男らしくて!」

「え…」

「南が弱っちく見えるぞ!ははっ!」

「父さん…」





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