アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「そうなの! この葡萄酒なんだけど。こんなにも芳醇で舌触りの良いものは初めてで感動しちゃって! あたしこれなら何本でも空けれちゃうわ」

「ありがとうございますっ! 今もう一つお持ちしますね…!」

 店の料理と酒を賞賛され、まるで自分が褒められたかの様に喜ぶスズラン。つられてエリィも微笑む。

「ふふ、お願いね。ねえ、良かったらスズランちゃんも一緒に飲まない? もちろんあたしの奢りよ」

「え! えっと、お仕事中なのでっ! それにわたしまだ未成年なのでお酒は……でもお誘い嬉しいです」

「あら? この国の成人は確か十八よね、それとも二十だったかしら?」

「いえ! 成人は十八ですよ」

「そう? ……って事は、スズランちゃん貴女…」

「もうすぐ十六になります」

「はあ!? じゃあ貴女まだ十五って事??」

「あ、はい…」

「!! 嘘でしょ。貴女どう見ても十八、九位に……でも、まあその見た目の割には初心(うぶ)でキュートな反応だものね。納得だわ……ああ、だからなのね! さっきの子の態度。わかるわぁ。うふふ可愛い、若いって良いわねぇ」

 呆気に取られているスズランを横目に独りごちるエリィ。どうやら自分自身を納得させた様だ。
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