アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「あ、葡萄酒も開けますね。えぇっと……んんっ…あれ?」

「ふふ、頑張って。スズランちゃん!」

 コルクを抜こうと格闘するも未だ慣れておらず、悪戦苦闘している所へセィシェルが早足で向かってくる。

「あ。セィシェル!」

「馬鹿。ったく何やってんだよ貸してみろ」

「ありがとう!」

 悪態をつきながらも、スズランから瓶を奪い慣れた手つきでコルクを抜くセィシェル。気のない素振りで瓶を返してきたが、銘柄を確認するとあかさまに眉をひそめた。

「別に。それよかそれ、うちの店の中で一番高ぇ奴だけど大丈夫なのか?」

「そ、そうなの?」

「あら。どうりで美味しい筈ね」

「げ! 馬鹿力ゾンビ女! まだいたのかよ」

「なあに? いちゃあ悪いわけ?」

 セイシェルの少し・・・──いや、大分失礼な物言いにもひるまず、エリィはスズランから瓶を取り上げてグラスに手酌する。そして一気にあおり、はあぁ……と恍惚な表情でため息をもらした。

「っておい! もうかなり飲んでんじゃねーか! これざっと見積もっても130…いや140アルマ位はいくぞ? 本当に払えんのか?」

 乱立する酒瓶と積み重なる皿などを目の当たりにしてセイシェルが息巻く。
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