アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「何となく…。でも先に警備さんはアーサ王子なのかもって気づいて。それで、ライアがアーサ王子だったら? って思うとわたし、今まですごく失礼な態度ばっかりだったからどうしたらいいか分からなくて……ごめんなさい…」

 本当はあの夜。小川に反射した月明かりに一瞬きらめいた瞳。あの色を見た時から分かっていたのかもしれない。無意識に心の奥で淡く期待を寄せていたのだから。

「怒って、ないのか? 俺、酷い事しただろ? 俺こそスズランに嫌われたらって思うと中々言い出せなかったんだ……ごめん」

 スズランは強く首をふった。
 そしてなんて遠回りをしてきたのだろうと思ったが、お互い本当に同じ様な気持ちで居たと言う事が何よりも嬉しかった。そうなるともう、この想いを小さな胸に留めておく事は出来ない。こうしている間にも溢れそうだ。

「あの、それでね……もう、だめなの…」

「え! 駄目? やっぱり俺の事軽蔑した?」

「……ちがうの。あなたがとてもえらい人で、どんなに身分の差があっても、もう自分の気持ちに嘘はつけなくて……どうか想うことだけは許してください。わたし……あなたが、好き…!」

 言葉にしてこの本心を伝えたかった───。
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