《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~
冷たい壁が背中に張り付く。何を仕出かすか分からない情動のハリが前方に迫る。
「逃げようだなんて考えるだけ無駄だよ。鈴蘭、僕はね。ただ静かに過ごしたいだけなんだ。……もうあの国のしがらみとか過去とか心底どうでもいい。君が僕の許嫁? 花嫁? 笑わせる。僕の事なんて何ひとつ知らないくせに」
「知らない…! わたし、ハリさんの許嫁だなんてそんな事知らない!」
「それでいいよ。だから僕の許嫁だなんて二度と口にしないで。……さあ。君には一度、死んでもらうよ」
(え…!?)
真の闇夜を湛え込んだハリの瞳。
そこには以前彼が見せた怒りや憎悪の様な剥き出しの情念とはまた〝別〟の感情が潜んでいた。全く別の、もっと自己的な理由で動いている……そう感じた。思えば話し方なども前回会った時とはまるで別人だ。
素早く伸びてきた腕がスズランの首筋を的確に捉えた。もう一方の腕も添えられ、頚部に力が加わるると指が気道に食い込み圧迫された。
「やぁ…! んん、っ」
「……何? 何か言いたそうだけど。ああ、ラインアーサに助けを求めても無駄だよ。この部屋には外からは決して入ってこれないように強い結界を張った」
ざわりとハリの瞳孔が拡がる。
「逃げようだなんて考えるだけ無駄だよ。鈴蘭、僕はね。ただ静かに過ごしたいだけなんだ。……もうあの国のしがらみとか過去とか心底どうでもいい。君が僕の許嫁? 花嫁? 笑わせる。僕の事なんて何ひとつ知らないくせに」
「知らない…! わたし、ハリさんの許嫁だなんてそんな事知らない!」
「それでいいよ。だから僕の許嫁だなんて二度と口にしないで。……さあ。君には一度、死んでもらうよ」
(え…!?)
真の闇夜を湛え込んだハリの瞳。
そこには以前彼が見せた怒りや憎悪の様な剥き出しの情念とはまた〝別〟の感情が潜んでいた。全く別の、もっと自己的な理由で動いている……そう感じた。思えば話し方なども前回会った時とはまるで別人だ。
素早く伸びてきた腕がスズランの首筋を的確に捉えた。もう一方の腕も添えられ、頚部に力が加わるると指が気道に食い込み圧迫された。
「やぁ…! んん、っ」
「……何? 何か言いたそうだけど。ああ、ラインアーサに助けを求めても無駄だよ。この部屋には外からは決して入ってこれないように強い結界を張った」
ざわりとハリの瞳孔が拡がる。